玄関脇のプランターへの水やりは、子どもたちの日課だ。
別に当番が決まっているわけではないのだが、入れ代わり立ち代わり世話を焼きにくる。プランターや鉢の数もそこそこあるので、水場への往復を何度も根気よく繰り返している。
そんなある日、ガラガラと音を立て青い台車がやって来た。その中にはなみなみと水を湛えたじょうろが4つ。
ここのところ、押したり引いたりひっくり返ったり、台車と遊ぶ、、、というか格闘している彼らのようすは目にしてはいたのだが、ここまで道具として使いこなすようになろうとは。
「なるほどねぇ。」
彼等の英知を称えながら、こうやって文明は進化してきたのだなと感じ入った。
ただひとつ困ったことは、先に水やりに来た子どもたちによって、どのプランターもタップタプの状態で、これ以上の水はただ鉢から溢れ落ちるだけ。保育園の植物たちは、こんな過酷な状況を生き抜いているのだ。
他にいい所はないかと園庭を見回すも、うまい場所が見あたらず、とっさにエイヤと指さしたのは園庭に広がる芝生であった。この何とも間抜けな提案に、私の指差す先を見渡した彼等の動きも止まってしまった。
慌てた私は「ほら、あの木の前の芝生、水を欲がってるなぁ。」と園庭の片隅に彼らを先導していく事にした。
私の後ろを追ってくるガラガラガラという車輪の音を聞きながら、だんだんと申し分けないような気分になってきた。
でも、、、でも、こういう時のための台車だよね、、、ねっ。